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改正労働基準法(平成31年)

内閣府「働き方の改革」分科会における議論の整理(中間報告案)※一部抜粋では、「長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等により、労働者の健康保持を図るとともに、どのようなライフスタイルであっても、家事や育児を含め、普通に日常生活を送れ、希望する労働者が家族と共に触れ合い、絆を深めることができるような時間を確保できるようにする。」としています。要は、働きやすさ、生活しやすさに焦点を絞って改革していきましょうというものです。
働き方改革というと、目新しい働き方が注目されがちですが、労働時間管理の基本をしっかりと抑えて、長時間労働の抑制や自社の働き方を見直してみることが重要です。

「働き方の改革」分科会における議論の整理(中間報告案)

  • 若年者の結婚や家族形成が可能となるよう、就業による経済的自立を図れるようにする。
  • 長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等により、労働者の健康保持を図るとともに、どのようなライフスタイルであっても、家事や育児を含め、普通に日常生活を送れ、希望する労働者が家族と共に触れ合い、絆を深めることができるような時間を確保できるようにする。
  • 若年期、子育て期、子育て後及び高齢期といった個人や家族のライフステージごとに変化するニーズに応じて、個人が家族との協力の中で、柔軟な働き方や労働時間を変化させるなど、多様な働き方を選択できるようにする。
  • 年次有給休暇やまとまった休暇の取得により、豊かでゆとりある生活を実現するとともに、個人が中長期的な観点から、職業キャリア形成や地域活動、社会貢献など、自らの生涯にわたるキャリアを切り拓くことができるようにする。
  • 仕事の進め方や働き方の見直しを進めることにより、企業にとっても生産性の向上など経営上プラスになるようにする。

今回は、「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の取得促進」等、労働関連法令の改正がありましたので、順次解説していきます。

【今回の主な法改正】

  • 時間外労働(残業)の上限規制
  • 一定日数の年次有給休暇の確実な取得
  • フレックスタイム制の見直し
  • 高度プロフェッショナル制度の創設
  • 同一労働・同一賃金:不合理な待遇差の解消(パートタイム・有期雇用労働法) 等

長時時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等

1.労働時間制度の見直し

1)時間外労働(残業)の上限規制

今回の改正では、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働 含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定することになりました。
(※)自動車運転業務、建設事業、医師等については、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外があります。研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、適用除外となります。
どの様に変更があったのか、見ていきましょう。

原則の36協定について

労働基準法は、1日8時間、1週40時間、週1回の休日を原則としていますが、中小企業の実情を考えれば、この原則を超えて残業しなければならないのが事実です。
この場合は、会社と従業員との間で、労働基準法第36条に基づく「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出ることで、限度時間の範囲内で、時間外労働や休日労働が認められます。

(※)限度時間とは
労働基準法で労働時間は、1週40時間、1日8時間までと定められています。会社と従業員の代表との間で時間外労働協定(36協定)を結んだ場合は、これを超えて働かせることが可能です。ただし、「時間外労働の限度に関する基準(限度基準告示)において、一定の限度が定められています(一部適用除外あり)。

(注)1年単位の変形労働時間制をとっている場合

期間 限度時間 限度時間(注)
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヶ月 45時間 42時間
2ヶ月 81時間 75時間
3ヶ月 120時間 110時間
1年間 360時間 320時間
36協定の特別条項とは?

繁忙期や突発対応などの場合は、上記図の36協定の限度時間を超えて、時間外労働をしなければならない場合もあります。その場合、特例として特別条項を結ぶことで、1カ月の時間外労働の上限をさらに延ばすことが可能になります。(例:月の時間外労働45時間⇒60時間に変更)事実上、特別条項を設ければ、時間外労働は青天井でした。

今回の改正点は?

週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とし、違反には以下の特例の場合を除いて罰則が課されます。特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間が年720時間(=月平均60時間)となります。かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設けることになります。この上限について、①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内を満たさなければなりません。②単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たす必要があります。③加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回が上限となります。他方、労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとし、行政官庁は、当該 指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行います。
大企業は、2019年4月から施行、中小企業は、2020年4月から施行となります。

≪上限規制≫
時間外労働の上限は、原則月45時間、年間では360時間

≪特例(今回の改正)≫
①労使協定を結べば年720時間まで可能
②2~6カ月平均で80時間以内を遵守
③繁忙期は月「100時間未満」とする

出展:H29.3.13日本経済新聞

◆中小企業の定義

【中小企業一覧】
作業分類 資本金の額 常用労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外 3億円以下 50人以下

※中小企業に該当するか否かは、「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する労働者の数」で判断される。また、「事業場」単位ではなく、「企業(法人または個人事業主単位)」単位で判断される。

自動車運転業務、建設事業、医師等については、人手不足などを考慮し、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外があります。研究開発業務については、医師の面接指導を設けた上で、適用除外となります。

【適用猶予・除外の事業・業務】
自動車運転の業務 改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用。上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用について引き続き検討する旨を附則に規定。
建設事業 改正法施行5年後に、一般則を適用。(ただし、災害時における復旧・復興の事業については、1か月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件は適用しない。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討する旨を附則に規定。)。
医師 改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用。
具体的な上限時間等は省令で定めることとし、医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る。
鹿児島県及び沖縄県における
砂糖製造業
改正法施行5年間は、1か月100時間未満・複数月80時間以内の要件は適用しない。(改正法施行5年後に、一般則を適用)
新技術・新商品等の
研究開発業務
医師の面接指導(※)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しない。
※時間外労働が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととする。(労働安全衛生法の改正)

2)月60時間超の時間外労働の割増賃金率についての中小企業への猶予措置廃止

従来、1週40時間、1日8時間といった法定時間を超える労働については、一律に25%以上の割増賃金の支払が義務づけられていました。
2010年4月1日の改正(労働基準法37条1項ただし書)では、1箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこととなりました。しかし、当時、「中小事業主の事業については、当分の間、適用しない」とされていました。
今回の労働基準法改正で、中小企業においても、2023年4月1日から、1箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の50%以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。

3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得

≪今回の労働基準法改正内容(年次有給休暇部分)≫

年次有給休暇の取得促進
使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については時季の指定は要しないこととする。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇とは、労働者が休日以外の日に有給で休暇を取り、心と体の休養を取れるように労働基準法で定められている制度です。

年次有給休暇は、
1.雇入れの日から起算して、6か月間継続勤務していること
2.その期間の全労働日に8割以上出勤したこと
1と2の条件を満たした労働者に対して10労働日の年次有給休暇を与える必要があります。つまり、休むことなくちゃんと会社に勤めていた場合は、6カ月経てば、10日の年次有給休暇を取得できるのです。

現行の制度

現行の制度では、労働者が会社に対して請求をして、はじめて年次有給休暇を取得できます。請求手続きは、特に定めはありませんが、事前申請を原則としている場合が多いでしょう。

新しい制度

新しい制度では、年次有給休暇のうち、5日分について、社員の希望を踏まえて取得日を予め企業が指定します。5日間については、年次有給休暇を与えることが義務になります。例えば、「6月3日と7月5日について有給休暇を会社側が定めて与える」ことが想定されます。
バラバラに時季を指定するよりも、7月8月等の夏の時期やゴールデンウィーク、年末年始などに合わせて時季を指定する形が現実的で、取得も促進されるでしょう。
また、新しい年次有給休暇の取得方式については、就業規則に定める必要があります。
2019年4月から施行となります。

2.多様で柔軟な働き方の実現

1)フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。併せて、1か月当たりの労働時間が過重にならないよう、1週平均50時間を超える労働時間については、当該月における割増賃金の支払い対象とする。

清算期間は、フレックスタイム制において、労働すべき時間を定める期間で、現行では、1か月以内とされています。1か月単位のほかに、1週間単位等も可能です。この清算期間の上限が、柔軟でメリハリをつけた働き方が可能になるよう、3か月に延長されます。
また、新設で、1週平均50時間を超える労働時間については、当該月における割増賃金の支払い対象とされます。

清算期間が1か月を超え3か月以内のフレックスタイム制においては、労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、使用者は、労働者の各月の労働時間数の実績を通知等することが望ましいと通達に盛り込まれる予定です。
2019年4月から施行となります。

<清算期間が1カ月を超える場合のフレックスタイム制の導入要件>

  1. 就業規則等でフレックスタイム制をとることを定めること
  2. 労使協定を締結すること
  3. 清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないこと
  4. 区分期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えないこと ※④が新しく追加された部分です。

2)高度プロフェッショナル制度の創設

職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が適用除外となります。

・健康確保措置として、年間104日の休日確保措置を義務化。加えて、①インターバル措置、②1月又は3月の在社時間等の上限措置、③2週間連続の休日確保措置、④臨時の健康診断のいずれかの措置の実施を義務化(選択的措置)。
また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければなりません。(※労働安全衛生法の改正)  2019年4月から施行となります。

3)勤務間インターバル制度の普及促進 (労働時間等設定改善法)

「勤務間インターバル制度」とは、勤務終了後、一定時間以上の「休息期間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。労働者が日々働くにあたり、必ず一定の休息時間を取れるようにするという制度です。
EUの加盟国が遵守すべきEU労働時間指令では、24時間につき最低連続11時間の休息時間を義務付けています。
一定の休息時間を確保することで、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることができるようになると考えられています。

勤務間インターバル制度を導入する企業の割合はまだまだ少ない実情があります。また、勤務間インターバル制度を導入する企業でも、インターバル時間は様々です。

  • 勤務間インターバル制度を導入する企業の割合(2015年度) 2.2%
  • 勤務間インターバル制度を導入している企業におけるインターバル時間(2015年度)
    8時間以下 38.5% 8時間超11時間以下 12.9% 11時間超 28.2%

<厚生労働省・勤務間インターバル制度の導入事例>

  1. 病院の事例:【看護職】11時間以上の勤務間インターバル
    過重労働は医療ミスや職員の安全管理に直結するため、全ての看護職員が必ず十分な休息をとって勤務に当たれるようにするために導入。
  2. 小売業の事例:最低8時間以上、努力義務で10時間以上
    最終的な目標として、一人ひとりが健康でいきいきと働くことができる環境をつくること で、一人ひとりの生産性が高まるだろうと考えて、導入。

    導入のポイントは、
    ➀勤務間インターバルの休息時間の決定(何時間に設定するのか)
    ②対象者の選定
    ③給与の決定(始業時間がずれて労働時間が減った分の処理)
    休息時間確保のために始業・終業時間がズレるだけなので、仮に始業時間が遅くなり、それにより時間外労働が発生するデメリットもありえる。
    勤務時間インターバル制度の努力義務化は、2019年4月から施行となります。

<中小企業 施行日 早見表>

中小企業 大企業
36協定改正(残業上限規制) 2020年
4月~
2019年
4月~
月60時間超の時間外労働の割増賃金率 2023年
4月~
2010年
4月~
年次有給休暇の取得促進 2019年
4月~
2019年
4月~
フレックスタイム制の見直し 2019年
4月~
2019年
4月~
高度プロフェッショナル制度 2019年
4月~
2019年
4月~
勤務間インターバル制度 2019年
4月~
2019年
4月~
同一労働同一賃金「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」 2021年
4月~
2020年
4月~